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『ITビジネスの原理』尾原和啓 読了!☆☆

ITビジネスの原理

普段、AmazonKindleストアで『本』をポチッとする際に、あまりランキングやリコメンデーションは気にかけない方である。 書店で気になった本やネットでの書評・口コミといった他の情報源から買い求めることが多い。

本書は、Kindleストアのページで見かけてポチッとしたレアケースなのだ。 こういう気分は、書店の中を隅から隅までグルグル周り、平積みされている本や棚に収納されている本を眺めているときに、本の方から『買っておくれよぉ〜』と語りかけてくるときの感覚に近いモンがある。

そんなこんなで思わずポチッとしてしまった本書。 ビジネス本の類ではあるが非常に読みやすい。 主にインターネット登場後のITビジネスの来し方行く末について正味2時間もあれば読了可能な適度なボリューム感である。

ITビジネスの原理
ITビジネスの原理
posted with amazlet at 15.03.06
尾原 和啓
NHK出版
売り上げランキング: 3,906

はじめにのところで、著者の経歴について触れられている。 マッキンゼー&カンパニーからドコモの常勤コンサルとして「iモードの立ち上げ」に従事。 その後はリクルートで「リクナビキャリア」の立ち上げだのGoogleにいったかと思いきや、現在は楽天と現在もネットを中心としたビジネスの中心に存在している企業を10回も転職を重ねているという...(^^;)ハハハ。

その間に起きたパーソナルコンピュータからインターネットへというフィールドの変化をまさに現場でビジネスを築いてきた視点でわかりやすく纏められている。 本書がタダのITビジネス本ではないと感じるのは、『プラットフォーム屋の視点、立場で見たITビジネスの姿』を単に提供側として語っているただの成功本というものではまったくなく、利用者の行動を中心としたグローバルスタンダードとドメスティックな日本人とのコミュニケーション論として読み進めるとなかなかオモシロい。

例えば『日本人』の持つ、良くも悪くもな共通性に注目すると、アメリカ初のプラットフォームでも当初の位置づけとは異なる日本人らしい使い方で発展していくということ。

日本というハイコンテクストな国は、こうした言葉ではない部分を楽しむ、隙間を楽しめるという文化がある。そのために、その部分が過剰に消費されるというわけです。
アメリカ人はローコンテクストだから、言わないと分からない。でも日本人はハイコンテクストだから、言わなくても分かるんです。

この背景には少なくとも二つの要素が必要である。 一つは、以下の引用の通り同じ共通基盤があるということ。

ハイコンテクストな文化というのは、同じ共通基盤、コミュニケーションの共通基盤があって成立するものです。共通の基盤があるから、その共通部分はあえて言葉にする必要がない。つまり阿吽の呼吸で説明できるし、またそれを楽しむことができるのです。

もう一つは、無駄な、どうでも良いようなことに思えるモノにも楽しめる。余剰部分を楽しめる素地があるということ。

文化的な構造という面では、もともと日本には私小説というか、個人のよしなしごとを読んでその機微を楽しむという文化背景がありました。

こういう見方をすると、TwitterにしろFacebookにしろどうでも良いようなことをユーザは垂れ流し続けている。Facebookに関しては本国アメリカでは明確な目的があったはずだが、日本国内においてはゆるぅ〜い繋がりの中で、目的が明確では無くなり、友だちの近況をふぅ〜ンと楽しむモノと化している。 LinkdInがなかなか国内でブレイクしないのもアメリカ的なローコンテクストと日本的なハイコンテクストの国民性の違いが関係しているのでは無いだろうか。

グローバル社会は英語だ、これからは英語が重要だということを言う人が多いけれども、本当にいけてるグローバル企業は英語よりも非言語化を重要視しているのではないか、というのです。その証拠にナイキやスタバのロゴからは英語表記が消えた。英語という言語ではなく、アイコンだけで、非言語のコミュニケーションを指向しているのではないか、という話です。

これも最近は特にITビジネスでも顕著になってきた部分である。 AppleのOSを中心としたフラットデザインの適用と、ハードウェアのユニボディ化。GoogleではAndroid OSのマテリアルデザイン化といったデバイスの非言語化はますます進むだろう。 さらには、GoogleChrome BookやAppleiCloud戦略に見られるようにもはやハードウェアとクラウドの垣根も曖昧になりつつある。 コミュニケーションを取るにあたっての垣根はドンドンあやふやになり、個々人の思考と道具の垣根を意識しなくなったとき、言語とコミュニケーションはどのような進化を遂げていくのだろうか? と、本書の纏めるITビジネスのその先の未来が気になって仕方がなくなった次第である。