SAY SILLY THINGS!

“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

枝川一丁目の整備に見える街の年輪の拡大と浸食

思えばボクの社会人人生は豊洲の再開発と供に始まったとも言えよう。
入社して配属された担当での最初の仕事は豊洲駅の上に聳え立つビルのOA・LANの構築であり、『高度情報化社会への先魁遷都』のスローガンの元に本社ビル移転プロジェクトの一翼を担っていたのである。

01Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH豊洲三丁目有楽町線豊洲駅

平成初頭の豊洲にはまだ石川島播磨のドックも残っており、港湾労働者の町として再開発が著しい今の豊洲の雰囲気とは全く異なり、荒々しいモノがあった。

02Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH豊洲三丁目豊洲センタービル アネックス

以来、異動にともない豊洲のビルで勤務になったり、他のビルに移ったりを繰り返して現在に至るが、豊洲に異動する度にこの街の変貌には目を疑うほどのモノがある。

03Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH豊洲四丁目交差点

そんな以前の地層を塗り固めて、その上に新たな地層を重層的に積み上げている豊洲の隣に紆余曲折の上で行政により集められたコリアンタウンが存在すると知ったのはつい最近のことである。
そんな歴史を持つ町、枝川一丁目を訪ねて豊洲駅前の環状三号線を北東に向かう。
ちなみに写真右に見えるセブンイレブンは、セブンイレブンの国内第一号店という、由緒正しいセブンイレブンである。

04Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH豊洲四丁目朝凪橋

豊洲運河に架かる朝凪橋を渡ると枝川一丁目だ。

05Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目越中島通り

この付近はほとんどが運河に囲まれた埋め立て地だが、この枝川一丁目は定規で測ったアフリカの国境のように長方形をなしている。

06Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目

埋め立て地の端である北側は都営アパートが建ち並んでいる。
そもそもこの枝川一丁目の成り立ちは、戦前の東京オリンピックの誘致にあたり、オリンピック会場の確保整備にあたって当時の江東区内に居住していた在日朝鮮人をこの地に集めたようなのだ。いわば行政による強制移住のようなモノなのだろうか?
そのような経緯があるからか、この長方形の一角には都営アパートが無数に建ち並んでいる。
そこに石川島播磨のドックや工場で働く港湾労働者、工場労働者向けに提供されたのだろうか。

07Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目枝川愛の教会

先日の山谷ドヤ街でも見かけたが、枝川一丁目にもキリスト教の教会が設置されている。
埋め立て地であり、区画も整備されていることからそれほど悲壮感が漂う街並みではないが、やはり社会福祉活動が必要な町でもあるのだろう。

08Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

長方形の周囲には都営アパートのような集合住宅が建ち並んでいるが、長方形の内側には一戸建ての住宅が建ち並ぶ。
平成時代に建築された新しい戸建ても多く、新たにこの地に居住するようになった住民も多いように見られるが、中にはこのようなトタンのバラックも点在する。

09Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

玄関の上に大きく張り出した二階部分。
これは建築法とか問題にならないのだろうか?
新たに建てましたと思われる奧の住宅も同じように2階部分が大きく張り出している。

10Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

戸建て住宅のエリアはどこの脇路地もこのように狭い感覚で密集している。
といっても、この地独特かというとそうでもなく、昔ながらの焼け残った下町の街並みとかと同じような感じ。

11Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

ただ特徴的なのは、洗濯機や洗い場といった水回りが家の外に置かれていることである。
住宅を建てるにあたって、なにか水回りに問題があったのだろうか?
特に古い住宅にこのようなケースが見られる。

12Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

バラックといっても平屋ではなく、このような2階建ての大きなモノが残っているのも特徴かもしれない。

13Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

海も近く海風も吹き荒ぶだろうが、隙間風とか心配になるほど傷んでいるが、これでもまだ居住している感じである。

14Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

ガレージのようなスペースにはウィンドサーフィンのボードが朽ち果てていた。

15Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

いろいろと増築を重ねた結果のようなトタン造りの大型バラック
この長方形の町の周囲には都営アパートや、新たな大資本のマンションが建ち並び、このような強制移住当初から存在しているような建造物は徐々に中央部から南の一区画にだけ取り残されているように見える。

16Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

工場と住宅が兼用のようなこの建物もまだ居住者がいるようだ。

17Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

歩を進めるといわゆるバラックの区画が現れた。

18Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

このように路地沿いに物干し台が並んでいる光景は昭和の面影を思い起こす。

19Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

おそらく以前は商店だったのではないか?と思われる青トタンの長屋バラック
こういった昭和の遺物はほとんどが南側の区画にのみ現存している。

20Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目

かと言えば、通りの反対側には現代的なマンションが、昭和の残滓を長方形の内側に閉じ込める壁のように立ち塞がっている

23Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

中央部の狭い区画は地権者との交渉が困難で、なかなかまとまった土地を確保することが出来ないのだろうか?
このような狭小住宅地では珍しく空き地が少ないのだが、中にはこのように解体されて空き地になっているところもあり、空き地が出来ると奧の建造物の全体を見渡すことが出来る。
おそらく、地権者の相続等で今後はこのような空き地が増えていくのではないだろうか?

24Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目

通りの内側と外側でまるで時間感覚が異なっているかのように見える枝川一丁目。

25Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目脇路地

マンションに限らず、戸建て住宅も最近のモノが増えているようだ。
しかし、行政の都合で集められたことに端を発するこの町であるが、周囲を運河に囲まれた長方形の埋め立て地という立地により、ある種街の地層という面では面白い歴史を歩んでいるかのように見える。
池袋の再開発を見ていると、従来の地層に重層的に積み重ねて新たな街の表情を作り上げることを繰り返している。
おそらく都市の再開発というモノはどこも同じようなモノで、渋谷再開発にしても同じであろう。
このような重層的、上下の地層の積み重ねに他に、より広い面でみると江戸から東京と渦巻き状に都市は拡大を続けており、明治以来の鉄道の発展により放射線状にも都市は拡大を続けてきた。
このように都市の地層とは重層的な上下のベクトルと、周囲へ拡大する円のベクトルが存在する。

しかし、この枝川一丁目という土地は周囲を運河で囲まれているということから制約があり、今回路地から路地を徘徊することで感じたのは、再開発は長方形の周囲から始まり、徐々に内部を侵食しているように思えるのだ。
おそらく、現在残っている中央南部の当時のバラック建築も徐々に無くなり、綺麗で四角く表情のないなんの変哲も無いさらに地味な住宅地へと変わっていくのだろう。

26Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川一丁目枝川橋

そんなこんなな枝川一丁目の散策を終えて、せっかくなので辰巳まで歩いて見ることにした。
この辺りはホントに運河に囲まれた水の都でもあり、ここは枝川橋からの眺めである。

27Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH枝川二丁目八枝橋

さらには八枝橋。

28Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH潮見一丁目七枝橋

そして七枝橋から豊洲方面をパ写リ。

29Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH辰巳一丁目都営辰巳一丁目アパート

潮見から辰巳に入ると再び都営アパートの群れ。

この辺一帯は都営辰巳一丁目アパートという団地になっているようだ。
Google Mapで確認する限り90号棟まであるらしい。

30Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH辰巳一丁目都営辰巳一丁目アパートたつみ商店街

辰巳一丁目には一戸建てというモノは存在しないのではないだろうか?
都営アパートと倉庫のみが存在する街というのもなかなか恐ろしい。
そんな団地の中の商業施設として、昭和な団地に必ずといっていいほど併設されている商店街。
たつみ商店街も敷地内に存在する。

31Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH辰巳一丁目辰巳桜橋

そんな都営辰巳一丁目アパートの群れに圧倒されつつ歩を進めると、辰巳駅の脇に架かるのが辰巳桜橋。 ここからは東雲のタワーマンション群を眺めることが出来る。
東雲からこの橋を渡って、辰巳駅を通勤通学で利用する人も多いようだ。

32Leica CL+Leica Elmarit TL f2 8 18mm ASPH辰巳一丁目有楽町線辰巳駅

ということで、ある意味歴史に翻弄された街ともいえる枝川一丁目と都営アパートしかない辰巳一丁目というある種特殊な街のブラり朝ン歩だった。