SAY SILLY THINGS!

“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

愛と幻想の肉じゃが

I've been tagged!!! / brainsed pork and potatoes

先日、同級生との会話の流れでこんな話になった。

♂『から揚げ、生姜焼き、ハンバーグ、カレーを出しとけば、オトコは文句言わずに黙って喰います(笑)』 ♀『私の持論!男子は肉じゃがが好きな訳じゃなくお母さんが作る肉じゃが好きなだけだからよそ者が無理して作ると火傷する~だったらガッツリ系で攻めるべし!と職場の若い子には教えてあげてる~』 ♂『それ大正解です!』

まさしく彼女の持論は至言名言だと思った次第なのである。 人の舌の記憶というモンはまだ物心つかない間から口にしてきたモノによって、基本的な味のベースが感覚的にかつ肉体的に組み上がるモノだというのが、ここ金沢に来て実感したことである。

改めて実感したきっかけは『8番らーめん』だ。 ここ金沢をほぼ完全制覇している8番らーめん金沢市民は『なんでやろ、8番』のコピーのまんまに金沢に生まれ落ちてから死ぬまで8番らーめんを食べ続けるのである。

それは何故かというとお昼の週末の街道沿いの8番らーめんに行くとよくわかる。 ファミレス風の店内のほとんどは、ファミリーで占められている。 しかも、おじいちゃんおばあちゃんから赤ん坊まで三世代で8番らーめんというファミリーが多いのである。

このように金沢市民は赤ん坊のころからおじいちゃんおばあちゃんとともに8番らーめんの味をその舌の記憶として植え付けられ、好き嫌いにかかわらず、成長しても舌の記憶に誘われながら死ぬまで8番らーめんの虜となるのである。

斯くも『舌の記憶』というものは恐ろしいモノなのである。ここまで金沢市民の洗脳が行き渡っている以上いくら大規模資本のラーメンチェーンが金沢に進出し8番の牙城を犯そうとしたところで、この絶対的な8番らーめんの優位性は揺らぐことは無いであろう。

この舌の記憶の恐ろしさというものがどれほどのものなのかということは、他県の人で大人になってからこの8番らーめんを初めて食べた人の反応でよくわかる。ボクもそうだったが。 こんなにも金沢市民にこよなく愛されている8番らーめんなのであれば、どれほど美味しいらーめんなのかときっと思うであろう。 しかし、その胸一杯の期待とともに8番らーめんを食すと、おそらく他県の方のほぼ100%は食前の妄想と食後の現実の落差にアゴが外れることは間違いない。 都内であれば、『福しん』レベル。しかも福しんよりも値段が高い。それ以上でもそれ以下でも無い。 大阪の方であれば、これならなんぼか王将の方が美味しかろう!と腹を立てるであろう。 それほど、『舌の記憶』というモノはそら恐ろしいモノなのである。

と、舌の記憶の事例で話が長くなりそうなので本題に戻ります。 男子であろうと女子であろうとその舌の記憶の源泉は『家庭の味』である。 お母さんの味だったり、おばあちゃんの味だったり、お父さんの味だったり。 ちなみにボクの場合は母が仕事をしていたため、おばあちゃんの味である。 なので北関東の農家らしい、しっかりと味の付いた強めの味わいがボクの好むところとなる。

男子の場合、この家庭の味で舌の記憶が蓄積され、実家を出て一人暮らしをはじめ、外食や自炊をしながら健康な男子であれば女子との恋愛が始まると、当然彼女の手料理なんてモンを食べたくなるのである。 そんな時に、彼女はなにを彼氏に作ってあげればよろしいか?というところで、先ほどの同級生の至言名言なのである。

マスコミはじめ情報メディアで料理女子を彼氏に印象づける献立としてよくあげられるのが『肉じゃが』である。男子も男子でイメージ的に彼女に作ってもらいたい料理のなかでも上位にこの肉じゃがをあげるであろう。

これがそもそもの間違いなのである。 たぶんにこの選択は女子も男子もイメージ先行+情報メディアによるイメージの定着感が否めない。 おそらくこういうことである。 『男子の舌の記憶=家庭(母)の味=肉じゃが=料理上手に思われるかも?』 浅はかなのだ。 うまい肉じゃがはたしかに料理上手に思ってもらえるであろう。 しかし、彼が求めているのは自分が慣れ親しんできた舌の記憶に残る肉じゃがなのである。

肉じゃがという料理はシンプルである分、家庭家庭で千差万別、ちょっとした調味料の違いが舌の記憶との相違を赤裸々に醸し出す。 シンプルであるが故にその違いの明確さが決定的になってしまう料理なのである。

また、肉じゃがを出された男子の方の反応もおそらくこういうことになる。 ♂『んっ!?...美味しいねぇ。』 この『んっ!?』の後の間のなかで様々なことを思い浮かべるのである。 おいしいかもしれないが、でもうちで食べてたのとちょっと違うんだよなぁ。もう少し醤油を足してくれればベストなんだけど。 とか、味はあまりかわんないけどうちの肉じゃがはもっと汁がダクダクなんだよなぁ〜こんなに煮詰めなくても...。 とか、しらたきが入っていないなぁ〜。サヤエンドウはいらないよぉ〜。 とか、うちの肉じゃがは全部ごった煮なんだよなぁ〜。こんなに丁寧に具材毎に料理して具材をわけて盛られちゃうとイメージ違うんだよなぁ〜。

とかとか、心の中での舌の記憶との相違を目の前の現実とどのように落とし所をつけようか一生懸命考えているのである。 でも、行き着く先は、 ♂『(心の声)でも、ここで文句言ったらもぉ〜作ってもらえないし、不味いわけじゃ無いからいいか。』 ♂『○○ちゃん、この肉じゃがうまいよっ!』 ととりあえずの答えはコレしか無いのだ。

しかし、先日の『残念な夫』のエントリーでも触れたが、恋愛は非日常なのでこの程度の返しでも何とかなるが、その非日常が進展して結婚となった場合、結婚は日常であるから、この恋愛時代の彼氏のとりあえずな反応をそのまま真に受けて作り続けると、とんでもない悲劇が勃発するのである。 キャァ〜〜〜ッ!!!!もはや、キッチン&ダイニングホラーが待ち受けていると言っても過言では無い。

と、ここまでのことを想定した上で、男子も女子も恋愛時代の手料理はナニにすべきかということをもっと真剣に考えるべきなのである。

ボクは、男子はガキだろうが大人だろうがとりあえず、 『カレー』、『ハンバーグ』、『鶏の唐揚げ』、『生姜焼き』が出されれば、文句言わずに食べるもんだと思うのでこの辺りのバリエーションでしっかり彼氏・旦那の胃袋を抑えておくのが賢明かと。 同級生も曰く、変に家庭料理でアピールするリスクよりもガッツリ系で攻めるべしということなんで、おそらく同じようなところを示唆しているモノだと思われる。

ちなみに、うちの相方さんとのつきあい始め、彼女のマンションに初めてお招き頂いた際に作ってくれた初めての手料理は『チキンカレー』だった。

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インドカレー風のチキンに細かくみじん切りにして炒められたニンジンと玉ねぎ。そしてゴツゴツのジャガイモと。 なんか、頑張って一手間二手間かけたんだろうなぁ〜という部分も含めて、美味しくいただきました。 カレーはどんなに料理下手でもルーさえあればなんとか形になるんでオススメです。

ということで最後に再度彼女の至言名言である。 男子は肉じゃがが好きな訳じゃなくお母さんが作る肉じゃが好きなだけだからよそ者が無理して作ると火傷する~だったらガッツリ系で攻めるべし!