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“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

『ジョナサン・アイブ』リーアンダー・ケイニー 読了!☆☆☆

JonyIve

今年一発目にポチった一冊。 本を愛でて愛撫しているだけじゃなく、ちゃんと読まねばっ! と愛撫した流れでそのまま読了!

亡きスティーブ・ジョブズとともにAppleを今世紀最大の企業の一つにまで成長を遂げさせた立役者の一人。 Appleの成功はスティーブ・ジョブズだけでも成し遂げられなかっただろうし、ジョナサン・アイブだけでも成し遂げられなかっただろう。 それほど二人が生み出した化学反応は周りの全てを巻き込み、ジリ貧だったAppleを持続可能性を持ち合わせた企業へと生まれ変わらせた。

本書の主人公ジョナサン・アイブはまだまだ現役のAppleのメインデザイナー兼インダストリアルデザイングループ担当上級副社長である。 まだ故人であるわけでもなく、現役引退したわけでもない工業デザイナーの伝記のようなものがつくられるのは珍しいことではないだろうか?

ただ、この20年のAppleとジョナサン・アイブの歩みはそれを一つの物語として纏めるにふさわしいものである。 本書では、ジョニーがデザインの道に進むに当たり、その先導役としての父親の存在を明らかにする。彼(父親)はイギリスのデザイン教育そのものをまさにデザインをした影響力のある人であり、ジョニーがただ感性の赴くままにデザインする芸術家肌ではなく、理論に基づき、形だけでなく素材、工程にまで真摯に向き合いデザインの中核とするようになるその基礎を作り上げた。 物語はこの父親とイギリスデザイン教育の流れと、イギリス時代のジョニーとデザインの関わりから始まる。 この辺りはこれまで情報としてなかなか触れられてこなかった部分なので新鮮である。

そして、後半部分。 スティーブ・ジョブズApple復帰から、ジョブズがジョニーを見出してからの怒濤の20年。 iMacMacbookiPodiPhoneiPadといったボクらのライフスタイルを変えてしまったガジェットたちの製品開発物語が続く。 ジョニーが率いるチームが生み出すデザインはどれもインパクトが強いものだ。 この強さというものは派手さとは全く違う。むしろ限りなくシンプルなモノに近づける。シンプルであるが故に機能がわかりやすく直感的といわれるもはやAppleお家芸のガジェットが生まれるのである。 デザインを意識させないまでのミニマリズムこれが究極と言わんばかりの徹底したデザイン主導の製品開発でAppleは現在の唯一無二の地位を気付いているのだ。

さらにジョニーは製品の外見に限らず、内部構造のデザインはもちろんのこと、その素材、製造ラインにまでデザインの領域を広げてきたという。 こういった、直接製品の外見からは解らない部分にまで細心の注意を払っている工業デザイナーはそうそういないのではないだろうか?

このような裏方としてのインダストリアルデザインという部分は、本書では文字だけなので具体的なイメージが沸かず、残念なところだ。 本書はデザイナーを主役においた書籍でありながら、その製品群の図版が極端に少ない。 掲載されていても白黒写真である。 その当たりは判型の制限もあったのだろうが、メインプロダクトのカラー図版くらいは付けて欲しかった。 その当たりが残念である。

ジョナサン・アイブ
ジョナサン・アイブ
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リーアンダー・ケイニ―
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本書をより愉しむために、いくつか関連書籍をご紹介。

カラー図版が無いという部分を補足するモノとして是非この『Apple Design』を参照されたし。 さすがに、ジョニーの学生時代のプロダクトまではカバーしていないが、あのApple20周年MacからiPad2までをカバーした図録である。

Apple Design 1997-2011 日本語版 -ハードカバー-
Sabine Schulze(ザビーネ・シュルツェ) Ina Gratz(イナ・グレーツ)
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また、外見的なデザインに限らず、製品の内部構造までもデザインの領域を拡大していったジョニーのデザインの神髄を知るための書籍がこちら、『アップルのデザイン』と『アップルのデザイン戦略』。

Appleの中核であるインダストリアルデザイングループが及ぼす影響をより具体的に知るにはこちらも是非。

アップルのデザイン
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