SAY SILLY THINGS!

“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

Book of the YEAR 2014

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年の瀬なのである。なにごとかやはり振り返る時期なのである。 というわけで、ボクの趣味に費やす時間の中でも多くの時間を割いている『読書』について今年のふり返りをするのである。

振り返ると『Book of the YEAR』も前回は2010年である。 ほぼこのブログを放置していた時間分エントリーが止まっていたわけだ…(^^;)ハハハ。 というわけで久々のBook of the YEAR 2014開催ですっ!!

まずは集計。 年々、仕事の忙しさなのか、歳とともに集中力を欠いているからなのか読了数は減ってますが、2014年の現在までの読了数は49冊。 分野的には多い方から、

・歴史          13冊 ・ノンフィクション     9冊 ・文芸小説         7冊 ・エンターテイメント小説  4冊 ・SF・ファンタジー     4冊 ・エッセイ         3冊 ・歴史小説         3冊 ・マンガ          3冊 ・ミステリー        1冊 ・実用書          2冊  合  計        49冊

ここ数年SFばかり読んでいたんで今年のSF4冊には正直ビックリ!? 実際に購入して積読状態になっているのはSFモノが一番多いのに......。 あまり夢の随に逃避することがなかったのだろうか??? と思っていたら、最後の最後で大物収穫っ!?

パッケージ的にはほぼ電子書籍というものの、判型は新書で出版されたモノが一番多く15冊。 やっぱり読みやすさとキャッチーな表題で手に取ってしまった感じだろうか。 時間が余り取れない時期になると重厚な知的冒険よりもお手軽な新書版くらいの内容に逃げがちになります…(^^;)ハハハ。 この辺が歴史、ノンフィクションものの読了数の多さを引き上げている。

だいたいボクの読書傾向では年末年始にかけて重厚長大のヘビーなモノを読むことが多く、それが一番インパクトあるモノだったりするのだが、今年はその手のものが無く、1年全体を通して小粒な感じ。 なので『☆☆☆☆☆』は1冊もなく、上位は『☆☆☆☆』に止まっている。

本の内容というか括り的には今年の特徴はなんといってもキリスト教モノ! 49冊中5冊読了という結果に。 これは今年にわかに『世界最小の国』が身近になってしまったことが故(笑) PJそのものには一線を引き、ボクは『平成の遣欧青年使節団』を横で囃し立てて、アゲアゲてテンション下がらないようにしてた、ただのガヤ芸人だったものの、やはりいざとなるといろいろと知的欲望が頭を持ち上げるのでございます。 そんな影響でいろいろとお勉強させていただきました。

そんなこんなの『Book of the YEAR 2014』今年は久々なのでBEST10でございますっ!

第一位『イエス・キリストは実在したのか?』レザー アスラン

いきなり第一位からっ!

まさに、公私ともに今年No.1のイベントに相応しい一冊。 『公』が御本山ならば、『私』は金沢転居なのでございます。 この本は金沢に引っ越してきて、Amazonさんがどれくらいの早さで届けてくれるか確かめるための金沢初ボチッの1冊(笑) 『神の子』、『救世主』、『奇跡』といったイエス・キリストの姿とは違う、ナザレの革命家イエスの人となりと宗教というモノの変容というものがわかる一冊。

テヘラン生まれでイラン革命時にアメリカに亡命してしてきたという著者のバックボーン自体もかなり興味深いモノがあるが、宗教学者であるだけあり、非常に理性的に当時のエルサレムの民族的事情、歴史的事情、宗教的事情を加味しつつ『人としてのイエス』を浮かび上がらせている。

当時、イエスが目的とした活動は愛と平和なんて普遍的なモノでは無く、ローマ及びユダヤ教聖職者たちによる現体制の打破、『ユダヤ人』のための『神の国』を作るためには剣をとることも辞さなかった革命家の姿が見えてくる。

その転機となるのが、ゴルゴダの丘での処刑でも、三日後の復活でも無く、死後三十年経ってからのエルサレムの崩壊であったという事実は非常に興味深い。 この後、ナザレの無学者が起こした革命運動が、民族的な要素をできる限り廃絶し、当時の大帝国ローマに適応すべく愛や平和といった普遍的な教義を中心としたものに作り替えられていく宗教活動に変容されていく。

第二位『ハイブリッドチャイルド』大原まり子

ハイブリッド・チャイルド
クリーク・アンド・リバー社 (2014-07-31)
売り上げランキング: 13,855

今年最後の最後で滑り込んだ一冊っ! 公私の思い入れが入った分、第一位の『イエス・キリストは実在したのか?』に及ばなかったが、本来のボクの嗜好だったら文句なしに第一位だったはず。

ボクはSF好きではあるが、あまりメカメカしかったり、スペースオペラ的なものはそれほどでもない。どちらかというとSFの舞台装置を借りながら文芸的な匂いを感じさせるものが好みである。

本書は舞台装置はSFの王道である。なにせ、機械帝国と人類の戦争という舞台なのだ。 そこに、機械に対抗するために人類が生み出した最終兵器。そして最終兵器の逃亡、星全体を支配するAI。AIに頼り切ってしまった人類の退行...etc。 どこをどうとってもSFなのである。

しかし、まるで肉体や生体反応を感じさせない文体が、この物語を非常に綺麗で無機質で無臭な奇妙な清潔感に充ち満ちたものにさせている。 作者が作り上げたあまりにも完璧な箱庭の世界をただ覗いていることしか読者には残されていない。

そんな、圧倒的な物語である。

第三位『そして官僚は生き残った 昭和史の大河を往く 第十集』保阪 正康

ランキングには入らなかったが、今年キリスト教モノと同様に多く読了したのが満州モノ。 ボクにはどうしても、あの時代のあの地域で起きた、起こしたことの戦略的な意図は理解しつつも、行動原理が理解できない。 しかも満州の地で実験的に実施された政治社会システムをもとに、戦後の官僚システムが作り上げられているということから、あの時代の官僚はなにを考えていたのだろう、そして敗戦を迎えて自分たちをどのように認識したのだろうか?という点に興味が沸き、手に取った一冊。

本書は主に戦争を主導してきたといわれる陸軍省海軍省内務省という3つの巨大官庁が、太平洋戦争後にどのように解体されていったか、または綿々と今の時代にも影響をもたらしてきたのかということが、当時のそれぞれの立場の戦争指導者や士官の行動を元に書かれている。 そういう面では役者の顔がハッキリしており、あの時代をわかりやすく理解できる。

陸軍がなぜ戦後『悪』の権化のように国民から思われるようになったのか、それに比べてそれほどの悪いイメージはなくむしろ戦争反対派として、なぜ海軍は『善』のイメージで捉えられるようになったのか? 明治以降近代化の中心をなした内務省はなぜ解体させられるにいたったのか? 等々、GHQの施策による戦前の体制の解体がそれぞれの組織戦略の有りや無しかで三様の末路を辿った経緯がわかりやすくまとめられている。

惜しむらくは、本書はあくまで3官庁の解体の話なのでしょうがないと思うが、GHQ側の思惑、特に日本の占領施策でG2とGSの対立があった等々、米国側の思惑ももっと取り上げていただきたかった。

第四位『織田信長 〈天下人〉の実像』金子拓

毎年毎年、戦国モノ、明治維新モノに関しては歴史小説や歴史モノを読み漁る。 毎年毎年、それなりに新解釈の本が出版されるので飽きずにポチッとしてしまうのである。 本書は戦国の革命家とも大魔王とも称され、この御仁が日本の近代の幕開けであるとまでいわれ、ほぼ定着している開明的政治家の代表とも言える織田信長の新解釈である。 新書のボリュームにしては非常に衝撃的な内容だった。

本書は、武威による全国統一という面ではなく、足利義昭を奉じての上洛から本能寺の変までの15年間を『朝廷』との関わり、『朝廷』側からの視点から今まで述べられてきた朝廷と信長の関係性を再構築したものである。

信長が使用していた『天下布武』。 ここでいう『天下』とは我々がイメージする天下と同一なのであろうか? 天下布武とは天下統一と同義なのであろうか? 著者はこの『天下』と『統一』を切り離して考えてみることが必要だと説く。

では、ここでいう『天下』とは、天下の範囲とはどこまでを対象としたものだろう。 朝廷の大切な役割とされる『天下静謐』。この天下は一体全国を指しているモノだろうか? この辺りの解釈は目から鱗である。 導入部で視点の転換を迫られることにより、信長上洛後の彼の考えとされてきたこと、行動の解釈が全く違ったモノとして再構築されていく。

第五位『突変』森岡浩之

突変 (徳間文庫)
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森岡浩之
徳間書店 (2014-09-05)
売り上げランキング: 21,731

ボク自身大のSF好きを自負している。 が、悲しいかな今年はSFモノはたったの4冊である。おかしい、あきらかにおかしい...。 そんなに現実に満足しているはずはないのだが...。 今年のSFモノは本書と第二位の『ハイブリッドチャイルド』以外ではグインサーガシリーズの2冊だけである…(^^;)ハハハ。

そんな貴重な今年のSFモノ、今年読んだ小説の中でもなかなかの手応えだったのが本書。

舞台設定はSFであるものの、描かれる物語は日常生活に突如舞い込む『被災』に遭遇した市井の人々の物語である。

本書がSFである理由は舞台設定にあるのだろうが、タイトルにある『突変』。 突変とはある区域内が別次元、異世界の同一区域と入れ替わる現象のことである。

表地球と裏地球なのか、全く地球と異なる異星なのかははっきりしない。 表から裏に転移した表地球だった一部は寓地と呼ばれ、寓地からみた表地球は故地と呼ばれる世界を舞台に、ある日突然巻き込まれた住人たちの日常がリアルに描かれていく。

震災のような大災害に見舞われたとき、人というものはかくも日常の意識に固執するものなのか?というくらいに目の前に起きていることと日常の心配事が奇妙に重なり合う。 あまりにも理解不能な事象を目の当たりにするとパニックに陥らないような平衡感覚が働くのだろうか? そんなことどうでもいいと思われることに執着する住民の行動が怖いほどリアルに感じた。

第六位『夏のくじら』大崎 梢

夏のくじら (文春文庫)
大崎 梢
文藝春秋 (2011-06-10)
売り上げランキング: 317,394

金沢に転勤になり、高知に行く機会がほぼなくなってしまい、高知の姫ややいろ亭を懐かしむ中、この夏のよさこいに向けて、日々謎のムー少年社長からはノルウェーからのよさこい参戦模様が報告される今年の夏。 よさこい本番に向けて盛り上がっていく高知の姫や謎のムー少年社長の姿をみていてよさこいに興味が沸き出してポチった一冊。

青春小説の王道『ボーイ・ミーツ・ガール』、といってもすでに四年前に出会った彼女との約束果たすために彼女を探すという物語。 そこに夏のよさこい祭りが舞台装置として描かれる。

よさこいにかける人々の想いや、このお祭りの情景がいきいきと描かれている。 そもそもこのお祭りは各チームすべて自分たちでプロデュースして自腹を切ってプログラムを制作し、祭りの運営側もすべて手弁当で踊り子たち各チームを支援するすべてが手作りのお祭りなのだ。 2年前から数ヶ月の間に何回か高知を訪ねて、高知の姫たちと語り飲んだ街の景色を思い出す。

本書を読んでみて本場のよさこいの空気を自分も肌で感じたいと思わせる、暑い夏の日の二日間の物語であった。

第七位『ティーンズライフ』歩祐作

ティーンズライフ (講談社BOX)
歩 祐作
講談社
売り上げランキング: 910,762

ボクは文芸小説を好む質だが、人間の業とか赤裸々な精神を吐露するような重私小説的な世界観は好きではない。 よりかるく、未来を感じさせてくれるような青春小説が大好物なのである。 たぶんに中学高校時代への郷愁によるものなのかもしれないが…(^^;)ハハハ。

本書の時間は中学、高校のそれぞれ3年間。 決して長い期間でもなく、むしろあっという間に過ぎ去ってしまう3年間。

狭い世界で、 狭い仲間で、 狭い思考で、

大人になって振り返るとそれはただただ恥ずかしく、甘ちゃんなことなのかもしれないけど、それでもそんな『狭い』領域の中で、ものすごく真剣に悩み、濃厚なコミュニケーションをとっていたあの時代。

そんな成長期が舞台の青春小説が大好きである。

本書も高校2年の春夏秋冬を舞台にクラスメイトのそれぞれが持つ悩みと、それを支えきれずに悩む仲間たちの心象風景が描き出されている。

今年なって、長らく連絡が取れなかったサークル仲間や中学の同級生とfbでまた繋がった。 たまにコメントしあう距離感が心地よい。

第八位『ペンギン・ハイウェイ森見登美彦

現在活躍している小説家の中で、森見登美彦万城目学の作風・世界観は特にボクの妄想を膨らませてくれるので好きな作家である。

本書はファンタジーのカテゴリーでも良いのかもしれない。 街をヒョコヒョコ歩き回るペンギン、虹色に輝き膨らんだり萎んだりする謎の物体、ちょっとミステリアスなお姉さん。ジャイアンみたいなガキ大将。

そんな日常とはちょっと違った空間が現れた生活圏を冒険するしっかり者の小学生のちょっとした成長の物語である。

第九位『日本近代史』板野潤治

日本近代史 (ちくま新書)
坂野 潤治
筑摩書房
売り上げランキング: 21,007

学校教育において幕末から現代にいたる時代の歴史は非常に薄いものでしかない。 時期的に受験生だと二学期の最後から三学期というバタバタする時期なのでそれどころではないからなのか、そもそもカリキュラムにムダがあり、その時期までずれ込んで結果内容を薄めざるを得ないのか?はたまたこの時代はちゃんと理解しなくてもよいという文科省の陰謀なのか?

とにもかくにも、近現代史の基礎知識を植え付けられずにのこのこ社会人になってしまうボクたちなのである。

そんな貴兄にオススメ名本書。 1857年から1937年までの80年間についてわかりやすくフェージングしてそれぞれの時代の説明とそれが次の時代にどう繋がっていくのかを解明してくれている。 公武合体の「改革期」、尊王倒幕の「革命期」、殖産興業の「建設期」、明治立憲制の「運用期」、大正デモクラシーの「再編期」、昭和ファシズムの「危機期」、大政翼賛会の「崩壊期」コレにより、だいぶ頭の中のワクが整理できる。

あとは興味を持った時代の書籍を読んで、時代時代の知識を深めていけばいい。 新書にも関わらずかなり重厚な一冊である。

第十位『国家の崩壊』佐藤優

国家の崩壊 (角川文庫)
佐藤 優 宮崎 学
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-12-22)
売り上げランキング: 397,889

ベルリンの壁崩壊に始まる90年代の社会主義陣営の崩壊。 当時日々ニュースで放映される映像を見て、『歴史』というもの初めて目の前で実感していると思ったモノである。 冷戦まっただ中の青春を過ごした身としてはまさかソ連が地図上からなくなるなんて思いもよらなかったことである。

本書は『外務省のラスプーチン』と呼ばれた著者がソ連崩壊に焦点を当てたモノである。 外務省職員という立場の困難さもあるだろうが、長年の職務を通じて気付きあげた人脈の広さ深さを最大限活用して得た情報の密度は深く、重い。

番外編『ボクのオールタイムベスト、青春三部作』

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)
山田 詠美
新潮社
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十七歳だった! (集英社文庫)
原田 宗典
集英社
売り上げランキング: 167,975


僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫)
中島 らも
集英社
売り上げランキング: 28,340

番外編としてまとめて3冊! ボクはあまり読み返しというモノはしない。だいたいの本は一回読んだら本棚に鎮座坐していただくだけである。 でも、なかには繰り返し読む本が存在する。 ボクのオールタイムベストな方々である。

今年はある時期まとめて読み返していた。おそらく、『夏のくじら』あたりを読んで青春モノに心がキュンキュンしてしまったのだろう(笑)

この3冊は青春モノの括りではボクのオールタイムベストである。もう、これまで何回読み返したことか…(^^;)ハハハ。 これらを読んでは、『男子って...やっぱり小さいときのバカさ加減が消えないまま成長すんだよね』と我が身のバカさ加減の言い訳を再確認するのです(笑)



以上、『Book of the YEAR 2014』でございましたっ!! 来年はもっとワクワクできる本に出会えるといいですなぁ〜〜〜。