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『アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ』ジョー・マーチャント 読了!☆☆☆

Antikythera mechanism

先週の週明け早々、京都のムー少年からお達しがっ!? 『アンティキテラの機械の話をオススメしときます。』 と。

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)
ジョー マーチャント
文藝春秋 (2011-11-10)
売り上げランキング: 53,183

うぅ〜ンどっかで聞いた...というか買った......ってか持ってるっ!!! そう、アンティキテラ島の海底で100年も前に発見された謎の機械。 かの有名学術誌『ムー』でも謎の古代機械、オーパーツの一つとして紹介されていた 古代ギリシアの古代コンピュータである。

本書を知った当時はハードカバーの単行本しかなく、文庫が出るまで自粛していたところ2011年秋に文庫版も出版されたため即ポチしたのである。 しかし、読み始める前に他のモンに興味が移ってしまったのか、以来3年ほど積ん読…(^^;)ハハハ。 今回、京都のムー少年のおかげで3年ぶりに手にすることになったのだ(笑)

して、この古代のコンピュータとも言える歯車式機械は一体何のためのモノなのか?という科学的探求の物語である。まるでミステリーの謎解きのように本機械に取り憑かれた男たちの物語が展開される。 なにせ、100年も前に海底から引き上げられて以降、ほぼ確実と思われる見解がなされたのはこの10年のことなのである。 それだけ、海底からの引き上げ後に辿ったこの歯車式機械の運命は時代に翻弄されるとともに、時代時代の科学の進歩がなければ解明が困難だったと言うことである。

2000年も前の現代の機械式腕時計に通じるような精密機械。 それは天文学的知識と数学的理解力、そして精密な技術力が結合されたモノであり、現代に繋がる技術史観としてはルネサンス以降にしか実現し得ないはずのものであるという。

だとしたら、紀元後早々にギリシア・ローマ文明が崩壊して以降、ルネサンスまでの技術的大空白はどういうことなのであろう。 やはりムー的なオーパーツなのか? 科学的な探究心よりも、ムー的な下世話な話の方に興味があるボクとしてはこの大空白時代の穴埋めの方に興味がそそられる。

たしかに、西洋文明の軸で捉える限りギリシア・ローマ文明以降、教会が支配する中世の闇が晴れるまで、ヨーロッパでは科学的な進歩はとどまっていたかもしれない。

京都のムー少年は本書の書評の中で、

たとえば2000年前の「機械」と現在のデジタルコンピュータとを結ぶような,明確な技術的系譜が存在していないことは,知識の共有と継承が十分でなかった可能性を物語る。本書によると,SF作家のアーサー・C・クラーク(1917-2008)は,「機械」を見た後に,「ギリシア人がその知識をさらに進歩させていたら,産業革命は千年以上早く起きていただろう」との見解を示したうえで,「そしていまごろ私たちは,月のあたりで足踏みしたりせずに,近くの星へ到達していたでしょう」と述べたという。むろん歴史に「もし」はない。しかし彼が示唆するものは十分に理解できる。

と技術的系譜の断絶について触れている。

しかし、科学的な進歩はその時代イスラム文明により引き継がれていたはずである。 古代ギリシア・ローマ文明のアーカイブイスラム帝国により引き継がれ、その後の激しい栄枯盛衰により進歩らしい進歩は見られなかったかもしれないが、やがてイスラムに埋もれていた種はルネサンスで華開く。 イスラム帝国全盛時の文献の解読は様々な要因により困難な部分があるかもしれないが、この古代のコンピュータが製作されていた当時の状況等、ギリシア・ヘレニズムの文化・文明に関する文献が多くイスラム圏に埋もれていると思われる。

この古代のコンピュータについて、ほぼ『なんのために作られたのか?』は解明されたと思われる。 次は『誰が作ったのか?』を解明できないものだろうか?