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『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』木下古栗 読了!☆☆

金を払うから素手で殴らせてくれないか?

Amazonでの本書の内容説明にこう書かれている。

読むものを混乱と肩すかしに陥れるカルト作家の真骨頂。古栗ワールド全開の小説集。

このように『○○ワールド全開!』とか『○○ワールドの真骨頂!!』『○○が魅せる独壇場!!!』とかいう売り文句が並べられている本は要注意である。

この手の売り文句がつく作家の物語は非常に読者を選ぶ。 読者の感性と作家の感性がシンクロできれば、これほどオモシロい物語は無い。しかし、少しでもベクトルの角度がズレていると、先々物語に没入しようにも取っ掛かりの数度の角度は、読み進めるほどに読者は作家の感性に引き離され置いてけぼりを喰らわされる。

本書には、

  • IT業界 心の闇
  • Tシャツ
  • 金を払うから素手で殴らせてくれないか?

の3編の中編が収められている。 『IT業界 心の闇』はIT業界に勤める主人公が、何の因果か上司の不倫相手の身代わりになって奥様へ謝罪するがしかしっ!?というお話。 『Tシャツ』は、若かりし頃日本のとあるご家庭でお世話になったアメリカ人ハワードが数十年ぶりに日本を訪れ、地域住民と交流をするというお話。かと思いきやいつの間にか主人公は入れ替わり立ち替わり、グチャグチャに入れ子になった行き着く先のラストを責任持つのは誰っ!?というお話。 『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、この3編のなかでは一番わかりやすい。ある日失踪した主人公米原正和を米原正和自身が同僚を引き連れて探しに行く?というお話。そして、衝撃のラスト。

それぞれのお話はさほど解りにくいというモノでは無い。ストーリー自体は単純である。 が、その単純なストーリーのページの右上から左下まで埋め尽くす言葉の数々にどれだけ乗れるか? この物語はどれもこれもリズムである。作者が奏でる『言葉』のメロディにどれだけ身を委ねて感じられるか次第で、この物語の評価は分かれる。

なんか、大昔に読んだ高橋源一郎の『さよならギャングたち』を初めて読んだ時のような印象を持った本である。

ちなみに、万全の状態で『無』の状態であったらボクとしては楽しめる本である。が、変に頭が冴えながら読んでしまったので、正直リズムに乗りきれずに読了してしまった...(^^;)ハハハ。 後々再読した時にはまた違った印象を抱くようなタイプの本である。

金を払うから素手で殴らせてくれないか?
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