SAY SILLY THINGS!

“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

『ワセダ三畳青春記』高野秀行 読了!☆☆☆☆

aoyama1

青き時代に思いを馳せた本を巡る旅は中学、高校を終えて、大学から20代というモラトリアムの時代を舞台とした本書に辿り着いた。

ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)
高野 秀行 集英社 売り上げランキング: 14,943

実は本書は2006年に購入後、9年の積ん読を経てよぉ〜やく再びボクが手にすることになったモノである。 きっかけは昨年10月あたりに、急にAmazonKindle本ランキングでTop10に入っており、なんだなんだ?なにゆえ今頃?と思い、そぉ〜いえば昔買ったよなぁ〜と本棚を掘り起こして発掘したのだ。 本との出会いとはこんなもんである。どうしても今読みたい!という本以外はこう言ったなんの脈略もないタイミングで手にするような本のほうが面白い(笑)

作者はあの泣く子も黙る早稲田大学探検部出身。 早稲田大学探検部と言えば、川口浩探検隊以上に世界各地の未開の地を踏破しリアルな探検を探求する部活以上の組織、奇人変人の巣窟である。 奇人変人が調子付きすぎて、まだボクのお尻が青かった頃にはしばしば新聞沙汰になったりもしたいまだ現役かつ伝説の部である。

本書では探検部での活躍は横に置いておき、作者が過ごした早稲田の三畳一間、家賃月1万2千円のぼろアパート、『野々村荘』での住人達や探検部絡みのケッタイな人々との悲喜こもごものエッセイのような物語のようなものである(笑)

とにかく、三畳一間での生活というモノがボクには信じられず、そこにさらに次から次へと出入りしていく周りの人々のケッタイさといったら、フィクションじゃないの?と疑いたくもなるのだが、こういう現象はボクも実際経験している。 こういう人たちは磁力の強い人がいると集まってしまうモノなのである(笑)

20代後半から30代はじめ、ボクのモラトリアムはまだ続いており、ちょっと身勝手に尖っていた頃の話である。 ちょっと変わりモンというのは、かなりの変わりモンというより磁力の強い人に吸い寄せられるのである。 気がつくと、ボクは会社と家と友だちの生活だけでは知り得ないような、風変わりな方々の輪の中に吸い込まれていた。 今思うとあの5、6年間は夢のような出来事であり、そこで改めて普通の自分を取り戻し、ずっと引き摺っていたモラトリアムから一歩踏み出すきっかけになったのである。 ある意味あの時間はボクにとっての未開民族の成人儀礼のようなモノだったのだろう。

本書では前半から中盤にかけて、野々村荘を中心とした信じられないようなケッタイな人々が巻き起こす抱腹絶倒のエピソードが続いていくが、後半急に作者の中での社会の範囲に変化が訪れる。 野々村荘に育まれながら過ごしてきた社会の外についに目を向ける作者。 きっかけは『彼女』である。 もっと彼女のそばにいたい。彼女と長い時間を過ごしたい。 そうして作者は11年間暮らしてきた野々村荘を後にして、野々村荘の外の社会に出て行くのである。

このモラトリアムの期間がまるごとボクと同じ期間で、さらに彼女をきっかけに長年暮らした家を出て行くというストーリーがまるで我が身に起きたことと同様で、しみじみ身に滲みるラストのほろりなのである。 このラストだけでさらに☆一つブラス! なんかほっこりなので☆☆☆☆なのでございます(笑)

ただただおバカではない、ちょっとしんみりほろ苦いモラトリアムからの卒業のお話なのである。