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『田舎でロックンロール』奥田英明 読了!☆☆☆

woodstock ticket

ボクの両親は団塊世代のちょっと前。ボクは団塊ジュニアの前世代。物心ついた頃には団塊な方々が好き勝手やり尽くし、世間的にヲトナ達は管理主義方面に力を入れはじめ、さんざん騒いだ『若者』といわれる人たちは『無気力』な方向に流れ始めた。 80年代が見え隠れする頃には『軽薄短小』、80年代が暮れ始める頃には『新人類』とボクらの世代は不定型な世代として、あまり特徴の無い谷間の世代なのである。

ボクはガキの頃からよく本を読んでおり、頭の中は生意気なクソガキだったんで『なんで10年早く生まれていなかったんだろう?』と思春期を迎えようとしている頃から思っていた。 10年早く生まれていたら、早熟であれば60年代後半から70年代といった時代のうねりをリアルタイムに経験できたのにと思うのだ。 なんかよくわからない『時代の熱』なるものをはき出す対象として学園闘争なんてものもあり、海の向こうのウッドストックではロックはまさに時代の象徴として大きく羽ばたこうとしていたあの時期、ボクには永遠に味わえないが故の憧憬のようなものが常にあの時代にはあるのである。 ようはフト訪れた時にはもう祭りは終わっており、自分も祭りに参加したかったのである。

田舎でロックンロール
田舎でロックンロール
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奥田 英朗 KADOKAWA/角川書店 売り上げランキング: 36,051

本書は、そんなボクにとっての憧れの時代をニッポンの片田舎でリアルタイムに過ごしたロック少年、奥田英明のエッセイである。

ボクが洋楽に興味を持ったきっかけは1年上の先輩のバンドが奏でるメロディーだった。 多分、文化祭だったのか謝恩会だったのかその出し物としてバンドの練習をしていたんだと思う。 ボクは毎朝校舎の中庭でテニスをしており、そんな中、中庭を囲む音楽室のほうから聴き慣れないメロディーが流れてきたのだ。 後で知ることになるその曲はJOURNEYの♪Don't Stop Believin'♪だった。

出だしのピアノのメロディーに、なんだこれはっ!?とまさに天啓のよぉ〜な出会いだった。 以来、ボクは当時のFENのヒットチャートを毎週心待ちにし、ミュージックライフを初めとする音楽誌を貪り読んで情報収集に励むガキとなる。 すぐ後で知ることになるが、当時JOURNYは産業ロックの権化のように言われており、後々のボクの音楽ライフを省みると、きっかけがJOURNYとはなんとも皮肉な出会いなのである...(^^;)ハハハ。

若干こじらせ始めるのはRainbowに出会い、Deep Purpleに先祖返りしてパープルファミリーに手を出し始めたころから、完全にこじらせてHR/HMの暗がりに我が身を投じることになるのだが、それはまた別の話(笑)

まさに本書の主人公奥田少年と同様に田舎の洋楽少年ならではの情報への飢餓感や、中学生ならではの経済的な限界をどうやるくりするかなど当時の自分が思い起こされ、本書全編において当時の自分を観ているかのように面白可笑しく、そして懐かしさに満たされたまま読了した。

あとがきで作者はこういう。

本エッセイは一九七二~七七年までの、わたしの洋楽青春期を綴ったものであるが、七七年を終わりにしたのはポピュラー音楽史においても必然だったとあらためて思う。ロックもソウルもジャズも、七八年になるとシーンがガラリと変わるのである。 ロックはAORと産業ロックへ、ソウルはディスコ・ミュージックへ、ジャズはフュージョンへと、まるで計ったように同時期に、それぞれが舵取りし、ひとことで言えば商業主義の産物となった。これまでロックの「ロ」の字も口にしなかった連中が、大学生になるやいきなりサーファーに変身し、「イーグルスって最高だぜ」なんてことを言い出した。まるでブティックで服を選ぶように、音楽もファッション・アイテムのひとつとなった。まったくもってクソな(しかし金になる)時代に突入するのである。だからあらためて、わたしはラッキーな世代だと思う。ロックの無垢な時代が、自分の青春期だったのだ

ボクがこの時代に憧れる所以である。まさにそうなのだ。 ボクが洋楽に目覚めたのはすでに産業ロックが確立し、さらにはMTV時代の幕開けと共にエンターテインメントとしての音楽が重視され始めた時期なのである。 故に、ボクの洋楽嗜好は高校・大学をかけて60年代後半から70年代のまだ不定型なものであり、実験が繰り返されていた時代のロックへと遡っていくことになる。

当時からの自分の音楽コレクションはCDから全てiTunesで管理されている。中学高校というまだ感性豊かな時代に洋楽に出会えてあらためて良かったと本書を読み終えて思った次第である。