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“TEAM H末端構成員”が妄想と現実の狭間で戯れます。

『初恋素描帖』豊島ミホ 読了!☆☆☆

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豊島ミホの青春モノである。 彼女の作品はもっと読んでいた気がするが、5年も前に読んだ『神田川デイズ』以来だった。 本書も購入したのは去年の10月。ともすれば幾多の本と同様積ん読の山脈に埋もれたままだったところが、フト手に取ることになったのは先日読んだ『ハジの多い人生』の影響で、心を学園生活に置き忘れてきてしまったからである。

本書に舞台はとある中学校の2年2組。 35名の中の20人の恋模様が連作短編小説のように描かれている。 一遍一遍の主人公がそれぞれ違う20人の主人公。 教室という空間に閉じ込められた社会は本来教室の生徒一人一人がそれぞれのドラマを抱えており、一人一人が主人公であるはずだ。 読者は本書を読み進めるうちに、リアルな教室模様のような感じで、このとある特定のクラスの人間関係を垣間見ることになる。

20人の視点、気持ちが並べられるとこの中に自分と似通ったキャラクターも発見できる。ボクも丸々同じではないが、こいつとこいつを合わせた感じだったよなぁ〜などと甘酸っぱい想いに駆られると共に心がざわついた。

中学2年ともなると思春期まっただ中である。当時のボクもまさに桃色少年まっただ中。 本書で描かれるムズムズとした恋心は常に持っていた。

あとがきで著者はこう書いている。

楽しかったのだ。 中学では、大好きな友だちと一緒にいて、いついかなる時も勝手なことをしていて、おまけに恋をしていた。二十九になった今も、一番「思うまま」の現実を手にしていたのは中学の頃の自分だと思うくらいで、当然二十一とか二とかの自分にとっては、「あの頃」が「今でも帰りたい黄金時代」だった。

ボクも自分の中学時代に同種の憧憬をいだくことがある。 どう比べても今の方が現実的にはいいと思うのだが、当時の無邪気さ、制約の無さ、自由さ、過去の後悔よりも未来の可能性しか見えていない残酷さ。 まさに本能の赴くままに日々を過ごしていたあの頃の清々しさは、帰宅時の渡良瀬川の夕焼けの清々しさとともににいまだにボクの心の中に特別な時間として残っている部分がある。

渡良瀬川

そんな中学時代を振り返ってみたい方は本書を開いてみるといい。 どこかのページにきっとあなたが見つかるはずです。