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風邪と運動会と読書


うちの相方さん曰く、「髪切ると必ず風邪ひくよねぇ〜?」とのことである。
この間の日曜日に3ヶ月ぶりに髪を切り、翌日たしかにボクは風邪を引いた。
来週の旅行に備え、早速月曜日に医者に行き薬を処方してもらったものの、その後火、水とどうしても出席せねばならない会議があり、日中休んで午後に出社というサイクルでなんとか騙し騙しやってきたのだが、とうとうそぉ〜もいっていられず、本日お休みをいただいたのだ。

よっしゃぁ〜!朝から寝まくって回復するのだッ!と今朝相方さんを見送った後、ベッドに入り込むやいなや......。
ギャァ〜ギャァ〜ヴァ〜ヴァ〜怪鳥や怪獣の雄叫びが聞こえてくる...。
そぉ〜なのだ。
我が家の真ん前には保育園があるのだ......。

しかし、奴等は朝もはよから何故あれほどまでにフルスロットルでハイテンションなのだろうか?
あれほどまでの自己顕示欲の発露はむしろ、ストレス社会が生んだ現代病の一つとしか思えないほどの怪獣ぶりである。
ボクはそんな子供ではなかったと親から聞いている。
自己アピールは、適したタイミングで適した相手に対して実施してはじめて効果のあるものである。
ボクは生まれながらにその術に長けていたと親から聞いている。
あんな、むやみやたらと叫びまくるのは只の自己顕示欲意外の何ものでもない。エネルギーの無駄である。

しかして、その怪鳥と怪獣の饗宴は今週末の運動会の予行練習へと繋がり、収まる気配がないことから、ボクは寝る事を諦めた。
となると、この思いかけず与えられた時間を有意義に過ごすべく、思いを巡らせた結果、読書に勤しむ事としたのだ。


久々に、小説を読んだ。
ここでいう「小説」とはエンターテイメント系ではなく、愛だの恋だの、誰かが傷ついただの死んだのとか、ストーリーがアップダウンする神経症的な昨今話題になりがちなものではなく、市井の普通の人々の生活を切り取っただけのような淡々とした物語を紡いでいる小説をいう。
ボクはこういう小説が一番好きである。
人から「何が面白いの?」といわれがちではあるが、こういう地に足着いたようなキャラクターとストーリーが好きなのだ。

しかし、あれほど好きだった小説もこのところほとんど読む機会がなかった。
ここ1、2年はほとんどビジネス書、自己啓発書コーナーにおいてあるような本ばかり読んでいる。
そういう歳や立場になったせいもあるかもしれないが、読書に集中できる時間が細切れであるということが一番の理由のような気がする。
通勤電車の中や、家でのちょっとした隙間時間で読書するとなると、どうしてもストーリーありきのものよりも、ビジネス書の類のほうが時間を切りやすい。
小説を読むなら、それこそ一気に読了するまで中断する事なく読み切れるくらいの集中できる時間がほしいのだ。
気ままな独身生活ならいくらでもそんな時間は作れるが、今となってはそれはなかなか難しい。


ということで、なかなかこういう機会がない中、本日読んだ本は、これ。

カイシャデイズ

カイシャデイズ

東中野のリニューアル専門のような建設会社を舞台に、そこの社員をそれぞれ主人公にした連作小説である。
特に事件が起きたり、事故に巻き込まれるワケでも無い。
リニューアル物件にまつわるそれぞれの立場のストーリーが淡々と表現されているだけの話である。
これが面白い!

強面、自分勝手、人の話を聞かないけど、なぜか社内の人望は高い営業チーフ。
自分は天才だ!とばかりに自分のデザインのためなら自腹で資材も用意してしまうデザイナー。
そんなデザイナーの図面をしっかりの現実のものとしてつくりあげる施工監理の現場監督。

基本的にはこの3人のチームを中心のように話は繋がっていくが、これに社内の誰よりも会社の事情や社内ルールに詳しい御局様や、立場は上にも関わらず人望の高い部下のチーフにヤキモキしている出世欲バリバリの営業リーダー、カリスマ性のかけらもない現場第一の社長等、魅力的な脇役の布陣もちょうどいい按配で配置されている。

それぞれが、自分の立場で責任を持って仕事を進めていく。
仕事の額的には個人的なお店のリニューアルからチェーン店まで、数百万からせいぜい数千万の案件をコツコツこなす中小企業の話ではあるが、ボクはとても羨ましいと感じた。
大企業と違い、社内の誰もが顔が分かる規模。人数も少ないから皆、自分の責任でもって仕事を進める。
仕事が終われば皆感謝と労りで報いあう。

どこぞの会社のように、「老害」な大ボスは自分のデスクでしか物事を考えられず、現場は省みない。
朝令暮改を越えるくらいの、あまりにも理解を越えたオーダー。
それを支えるスタッフは自らの責任逃れに終始し、全てを現場に押し付ける体たらく。
どれだけ立場を心配して害が及ばぬように社内を整理してもねぎらいの言葉一つも知らない大ボス。

こんな会社ではけして幸せにはなれないよな......フッ。
とところどころ現実の世界に押しつぶされそうになりつつも、この東中野ココスペースで繰り広げられるドラマとも言えないようなドラマを見るうち、これが普通なんだよな。普通の会社ってこんな感じなんだよな。と。

そんな普通の人たちによる普通のストーリーだが、おそらくどこにもないこの世界に浸れて、ボクは幸せな一時を過ごせたのでした。

ひとつの問題が解決すればまたひとつ問題が起こる。ひとつ現場が終わればまたつぎの現場がはじまる。そのわずかなあいだに酒を呑んでしまおう。

このちょっと肩の力が抜けたところに幸せは見つかるのかもしれません。



それと、この本を読むと無性にミスドに行きたくなります。
この本を読む際にはミスドのドーナツを用意してください。