「自炊」という名の自慰行為で自己満足?

昨年8月に我が家にiPadをお迎えしてから5ヶ月。
昨年は「電子書籍元年」とあちこち囃し立てまくりだったことや、そもそも書籍の電子化という点で仕事上も関わらざるを得なくなってきたこともあり、タブレット端末での読書の楽しみ方をあれこれとiPad上で試してきた5ヶ月でもあった。

iPadを手帳替わりのPDAやメモツールとしてハァハァ〜する面もあるが、各種電子書籍をダウンロードしてePUB、PDFだの.book、XMDFだのの各種フォーマットの書籍コンテンツの試し読みも当初はハァハァ〜しまくりだった。

Amazonが国内サービス開始して以来、本屋に行かなくてもポチっとすれば家に届く利便性やプライムサービスを使った当日配送で手元に届くまでの時間がかなり縮小されはしたが、電子書籍は読みたいと思えば、その場でダウンロードして読めてしまうというこの即時性には到底かなわない。
そういう面での電子書籍は読みたい時が買い時!というくらいの本好きには便利なパッケージではあるのだなと。


が、そんな当初の「悦び」もしばらくすると2つの点で現実に直面する。

1点目はコンテンツの質。
APP STOREで販売されるAPP形式のものは各出版社の販促の意味もあるのだろうが、多少面白みがあるものが多いかもしれないが、各社のサイトAPPで販売される電子書籍のリストはすでに色あせている本や、普段書店に行ってもチェックすることがないようなどうでもいい乱造本の類がほとんどだ。<これはボクの主観にもとづくものでしかないが。
最初のうちは興味が先立って、多少興味を引いたものは条件反射でポチっとしてたが、いい加減状況を把握できるようになると食指も動かなくなる。
これは、2つ目の理由によるものも影響している。

2点目はユーザ視点でのコンテンツ管理は現時点では不可能ということ。
本好きの本好きたる所以は、単にコンテンツを楽しむということもあるが、自分自身の本棚を創り上げるということも重要だ。
書店の本棚にハァハァ〜するものの、そこには自分の興味を引かないものがほとんど。
だが、自分の部屋の本棚は自分の趣味にあった書籍だけで創り上げられた、自分専用の棚に育っているわけだ。
その棚を一覧したときのハァハァ〜度合いは書店の本棚の比ではない。

この「自分自身の本棚」という機能は、現時点の電子書籍APPでは不可能である。
iPad導入当初はAPP形式のコンテンツを買い漁り、iPadの画面上は他のアプリと並んで電子書籍アプリがぞろぞろの横並び、最初は電子書籍とそれ以外のアプリで画面を変えて整理していたが、数が増えるにつれ徐々に煩雑化。
iOS4にアップデートしてフォルダ管理できるようになり、多少は改善されたが、でも自分自身の本棚には程遠い。
また、APP形式は1コンテンツ1アプリなんで画面上で確認できるが、サイト形式のAPPで購入した書籍&雑誌については、そのサイトAPPを立ち上げないと、購入したコンテンツが把握できないのだ。
これはサイトAPPが1つ2つならまだ把握できるが、いくつも立ち上がってくるとどこで何を購入したのか、もうお手上げ状態になる。
例えば、MAC系の雑誌に Mac PeopleとMac Fanがあるが、 Mac PeopleはVOYAGER BOOKSのAPP内にダウンロードされており、Mac FanはマガストアのAPP内にダウンロードされているわけだ。
とっさにどっちにどちらの雑誌が入っているのか未だに迷う今日この頃。
さらに最近では Mac FanはZinioでも購入できたりするんで、同じ雑誌を別々のサイトアプリなんかで買ったりしたら、も゛ぉ〜管理不可能、お手上げになることは必定!

そんなこんなで、この2つの点は12月の国内サービス第二の立ち上げラッシュに伴い、コンテンツの質ということでは多少まともになりつつあり、サイトAPPの乱立という面ではさらに煩雑化の度合いを増すことになった。


正直、もうiPad電子書籍を管理するのは無理!というのが現時点でのボクの感触だ。
今後、それこそePUB、でもHTML5でもなんでもいいが、オープンな規格で電子書籍コンテンツが統一され、音楽でいうところのiTunesのような管理ソフトが特定事業者サイト専用ではなくオープンなかたちで配布されるようにでもならないとこれは無理だろうと。
それか、国内出版社もパッケージ販売という面ではいい加減諦めて、コンテンツの編集という本来のコアコンピタンスの部分に注力して、パッケージ化&販売はAmazonAppleGoogleの黒船3社に任せるようにでもならないと蒐集家としての夢は期待できないだろうなぁ〜と。
本来複数の出版社のコンテンツを扱うのは書店の役割なんだろうけど、この出版不況下でいくら大手書店といえども、黒船3社のプラットフォームに匹敵する設備投資は到底無理だろうし、業界一抱えでプラットフォームを整備するなんて話は調整するまで5年以上かかるだろうし、なにより独禁法上どうなの?という別の問題も発生しかねないし......。
なんか日本の電子書籍の夜明けは遠いどころか、来ないぜよ!といった感が否めないのが昨年の電子書籍元年ブームの結論なんじゃないだろか?


そんなある種の諦観が芽生え始めた先生も走りまわる師走時に手にしたのがScan Snapだった。
自炊に関しては iPad導入以前から自宅のEPSON複合機で一枚一枚スキャンしたり(これはとんでもない手間で雑誌の特集記事を10冊ほど試して挫折'`,、('∀`) '`,、)、キンコーズで裁断してもらったものを会社のドデカイコピー機でスキャンしてみたり(これはさすがに業務時間帯以外でやらんといかんので機会がなかなか無く、一回やって止めた…(^^;)ハハハ。)
なもんで、iPad導入時にi文庫HDに自炊してPDF化したものを入れて読書してみたところ、これが意外と使えるとわかったものの、なにせ自炊機がなくてその後はなかなか蔵書が増えなかったが、これも先月のボーナスで相方さんのご好意でScanSnapを購入していただき、晴れて自炊生活が本格化したわけである。
とにかく評判とおりこのScanSnapくんの仕事が早い早い!
次から次へと飲み込んでPDF化してくれちゃうわけである。


以来、週末・年末年始休暇を使って自炊しまくっているわけですが、自炊本をi文庫HDに登録して、日々本棚が充実していくと「自分自身の本棚」が育っていくときのハァハァ〜と同じような満足感を感じるよぉ〜な。
ボクのi文庫HDの本棚は少なくても上の2つの理由はある程度解消されているわけです。
1つ目のコンテンツの質という点では、ボクが読みたいと思って購入した書籍を自炊したわけなんで、興味を惹かれるものしか棚にはないと。
また2つ目のコンテンツ管理という点ではi文庫HDさえ開けばいいわけで、iPadの画面を探したり、あちこちのサイトAPPを開いてコンテンツを探す手間もなくなると。


でも、これって結局自炊ネタの書籍は自分でまずは買わないといけないという手間と、買った本を自炊しなければならないという手間を書けないと実現しないんですよね。
昨年さんざん喧伝された電子書籍のメリットとして挙げられたモノの中では、せいぜい複数の本を持ち歩けることくらいか?
ソーシャルリーディングをはじめとする電子書籍ならではの機能なんて当然望めないし、PDFなんで容量も嵩んでしまう点やデメリットを上げればキリがない感じですが、でもこれでいぃ〜のかな。今は。と思い始めているのも事実です。
文字の大きさに関しては、i文庫HDには「内拡大」という機能があって、文字の拡大縮小が可能です。
自炊する本の大きさは様々なんで、左右の余白が大きい場合など内拡大をして左右の余白をちょどいい塩梅に文字を拡大することでバランスよく読書することも可能だったり。
電子ペーパーと違って液晶画面のiPadは目が疲れやすい」ということも言われてますが、輝度を結構絞っておけばあまり目の負担を感じずに読書できるし、なによりバックライトのおかげで、多少暗いところでも読書できるという逆のメリットもあったりします。

所詮、自炊するような人はそもそもガジェット好きな本好きしかいないだろうから、これくらいの手間をかけることくらいはあまり負担を感じないんじゃないかと。
かく言うボクはその典型なんで、これはこれで自分が気持いぃ〜やり方で楽しませていただければいいや!
と結構、今後の電子書籍のあり方には期待せずに我が道を行こうかなという思いが強くなりつつある年明けなのでした。


でも、仕事のほうでは当面いろいろと検討していかないといけないんだよな。
なんか、年明け前まではめっさやる気満々だったんだけど、最近仕事の方でもどぉ〜でもいいやというモチベーションの下がり具合なんで、どぉ〜しようかと思っていたところ、やはり先のことを考えている人はいるわけで…。
先週仕事始め早々に、今の電子書籍ブームの先の先を見据えて、今言う「電子書籍」とはちがうデジタルネイティブな新たなコンテンツの作成・流通のあり方について検討してみない?と声をかけられたんで、なんか多少モチベーションが上がりつつ今日この頃なのです。



そんなこんなで今週末の自炊本。計16冊。

【文化思想】3冊←こんなの絶対出版社は電子書籍化してくれたりしないもんな。
本田透喪男【モダン】の哲学史講談社
大塚英志「「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか」角川Oneテーマ21
東浩紀ゲーム的リアリズムの誕生講談社現代新書

【ビジネス】12冊←販促目的のビジネス本は電子書籍化してもいわゆる定番本は本でも売れる以上電子書籍化するはずないし。

外山滋比古「思考の整理学」ちくま文庫
梅棹忠夫「知的生産の技術」岩波新書
川喜田二郎「発想法」中公新書
川喜田二郎「続・発想法」中公新書
渡部昇一「知的生活の方法」講談社現代新書
板坂元「考える技術・書く技術」講談社現代新書
立花隆「「知」のソフトウェア」講談社現代新書
野村進「調べる技術・書く技術」講談社現代新書
松岡正剛「知の編集術」講談社現代新書
鈴木謙介「ウェブ社会の思想」NHKBOOKS
オーウェン・W・リンツメイヤー+林信行「アップル・コンフィデンシャル 上」アスペクト
オーウェン・W・リンツメイヤー+林信行「アップル・コンフィデンシャル 下」アスペクト

【実用書】1冊←昔流行ったガジェットのムックなんて到底電子化はないでしょうし。
Palm Chronicle」技術評論社