壮大なるプロローグ......。


ここ数年、年に一度はその年の読了本のなかでもこいつはスゲェ〜ッ!と思える重箱級ハードカバーの小説に出会う。
今年は、年明け1月に読了した貴志 祐介の「新世界より」が今年のその一冊なのかと、すでに今後の出会いも期待していなかった。

新世界より (上)

新世界より (上)

新世界より (下)

新世界より (下)

あれから半年、またもやその一冊に出会うこととなった。というかこれが今年の出会い本として「新世界より」を超えるものなのかどぉ〜〜〜かは読了した今であってもまだわからない。
というのも、この物語はよぉ〜やく壮大なるプロローグが終わったばかりだからだ。

ダン・シモンズの「イリアム」。

イリアム (海外SFノヴェルズ)

イリアム (海外SFノヴェルズ)

発売から3年の長きにわたりボクの書架で放置プレーされ熟成をまっていたこの本を3週間かけて本日よぉ〜やく読了した。
ハヤカワSFハードカバーらしく上下2段組のストイックさでありながら本文のみでも765ページという大著である。

読者は、このおそろしく重箱スタイルの本のページをめくるやいなやホメロスの長大な叙事詩イリアス」の世界へと誘われる。
ギリシア神話の神々と英雄がくんずほぐれつ入り乱れるトロイア戦争が舞台となる。
ただこれはこの長大な小説の1つのシーンでしかない。
これと同時進行で遠い未来の地球。わずかに生き残った人類は何ごとも手を煩わすことなく、機械の従者に世話をしてもらい自らは快楽のみに生きている。そんな世界の成り立ちに疑問を抱き、謎解きを求めて旅立つ人間のお話が2つ目のストーリー。
また、地球から遠く木星軌道。木星の衛星エウロパに居住する半生物機械モラヴェック達は火星の異常を検知して火星探検隊を調査に送る。このようやくSFちっくな話が3つ目のストーリー。

この3つの話が同時並行で中盤まで進み、後半ようやく謎らしきものが謎を呼び、3つのストーリーがようやく絡みだす。
さてさて、この物語の謎は解明されるのか?
.........いやいや、ページ数は残り少ないぞ!?!?!?
え゛っ!?もう10ページもないけどだいぢょぶなん???
ってか終わりましたが.........なにか?

そうなのだ。この「イリアム」という物語は始まりの物語なのだ。
ダン・シモンズは上下二段組765ページという壮大な言語空間を用いて、物語の舞台となる背景を詳細に描写し、キャラクターの性格付け及びキャラクター達に本編で活躍できるよう、十分な成長の機械・時間を与えてやり、本編での活躍が期待できるまでのレベル上げをこの小説で行っているだけなのである。
まさに、本来せいぜい用いても10ページくらいで収めるであろうプロローグにまるまるおそろしく重箱チックなハードカバーという空間を費やしているのである。

物語はまだ始まった、いや始まろうとしている?ばかり。
本編である続編の「オリュンポス」にてこの物語の謎は明らかになっていくということらしい.........。

「オリュンポス」購入して2年くらい放置プレーをしているが、とりあえず「イリアス」で疲れたんで、も少し様子見で熟成を待つことにする。