ロマンはどこだっ!?

DSC05644 『ロマンはどこだっ!?』

言わずと知れた?伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」と思っていたら勘違い、「陽気なギャングが地球を回す」の中の名台詞である。

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)
伊坂 幸太郎
祥伝社
売り上げランキング: 18,658

本を読んでいると、こういった一発でやられてしまうワンフレーズに出くわすことがある。
こういう文章は脳髄を経由せず、脊髄反射的に身体全体に染み渡る。したがって、全細胞が思考の塊になり、その作品に急速に没入していき至福の時間を過ごすことができるのだ。

昨晩会話の中で、『殺し屋のくじらとか聞いたら何の本かわかる?』と聞かれてとっさに伊坂幸太郎のヤツ!とまでは思い出せたんだけど作品名が出てこず...。(ちなみに正解は「グラスホッパー」です。)
しかし、伊坂幸太郎といえばこの『ロマンはどこだっ!』と言うことだけは灰色の脳細胞の中にしっかりと刻まれているワケで。
やはり、小説の中でのキラーフレーズって大切なものなのね。と久々に思い返した楽しいひとときでありました。

と、そぉ〜いえば以前はこういったキラーフレーズをノートに書き留めていたのを思い出し、先ほどそのノートを発掘した。
ちょうどうちの相方さんと付き合いだす前くらいの、積ん読崩壊圧死事故の恐怖に苛まれながら、日々読書に耽っていた頃に書き留めていたモノが多い。

いまだとKindle読みながらハイライトつけて、Webで一覧で見られるんで手間が格段に減ったが、この頃は本を読みながら気になるとノートを手に取り書き写していたんで、やっぱりこんなコトしていると本の世界に没入できず、面倒くさくなってきてそのうちいちいち書くのを止めてしまったものと思われる。
ノートにはナンバリングがしており、最後の数字は092だった。
100番までもいってないのか!?我ながら恥ずかしい…(^^;)ハハハ。

そんなノートの中から、今読んでも当時の作品の世界が蘇ってプププッとなってしまったものをいくつか紹介。ちなみにあくまで個人的な嗜好による基準です。


自分のために書く文章は人に見せるための文章に優る。
第一稿はハートで書く。
リライトには頭を使う。
文章を書くときは、考えずに書くこと。
映画『小説家を見つけたら』ウィリアム・フォレスター

新しい言葉はどんな場合でも過去の古い言葉の中に眠っているのだ。
小説を書く行為とは任意の場所に空間からスタートし、ここ以外には絶対にあり得ないという一行に向かう長い旅なのである。
『「書ける人」になるブログ文章教室』山川建一

ついにふたたび起動する私のロマンチックエンジン!

思春期を明けた頃には立派な変態になっていました。

恥を知れ!しかるのち死ね!

恋に恋する乙女は可愛いこともあろう。だがしかし、恋に恋する男たちの分けへだてない不気味さよ!
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

「男と女」その間には無限に広がる幸福と悪魔の奸計とが同居している。

大久保町は燃えているか』田中哲弥

いい思い出を復活させるには自分を騙すほどのストーリーテラーでなければならない。だいたい独りの努力じゃどうにもならないので、協力してくれる相手を探さなくちゃいけない。それが無理なら大人しく、いやな思い出を忘れることに専念するしかない。そうやって記憶は検閲され、虫食いだらけになり、ガラクタばかりが残る。

『自由死刑』島田雅彦

ウンコに思想はあるのでしょうか?

恋愛とは萌えて忍ぶものなり。

人間とは葦である。だが、萌える葦である。
『?』詠み人知らず

最初の二つは物書きの姿勢というか、ホッホォ〜と感心して書き留めたモノなんだろう。 特にショーン・コネリー主演の「小説家を見つけたら」はこの台詞に限らず未だに観返したくなるボクにとっての名作。

森見登美彦田中哲弥あたりは明らかに変態だし、島田雅彦に至っては変態というより変質者である。
文芸の枠に入っているからと言って油断してはいけない。だいたい、人間の業を表現するような物書き家業が健常者につとまるはずが無いのである。
ボクの思考の8割は『妄想』で補われているので、彼らのような捻りすぎて呆れてしまうような文章を目にすると、脳内でイメージされる妄想の世界はドーパミンが駆けずり回って、合法ドラッグなんぞものの数には入らないほどの快楽悦楽至福の世界が広がるのである。



大久保町は燃えているか (ハヤカワ文庫JA)
田中 哲弥
早川書房
売り上げランキング: 462,018

自由死刑 (集英社文庫)
島田 雅彦
集英社
売り上げランキング: 420,976

詠み人知らずで挙げたモノは多分、隣に鎮座坐して在らせられた我が偉大なるリーダーのお言葉であろうが、彼も立派な変態だ。
こうしてみると、つくづく変態の発する言葉にボクは弱いよぉ〜である。
まだまだ先達の域には達せない、しがない末端構成員のボクなのである。