新しい今の「東京」


サニーデイ・サービス
なんとも日向と木漏れ日が似合う名前を持ったこのバンドはすでにない。
90年代半ばにメジャーデビューをしてミレニアムとともにあっさりと解散してしまった。


山崎まさよしスガシカオ、Theatre Brookと共にこのサニーデイ・サービスはボクの90年代半ば以降の音楽生活には欠かせないアーチスト&バンドである。
どれも95年〜97年の間にメジャーデビューを果たしているが、山崎まさよしスガシカオに比べてTheatre Brookとサニーデイ・サービスはどちらも一般的に認知されるほどのヒットは飛ばしていない。
でも、ボクのなかではマストなバンドなのである。


東京コンサート

東京コンサート


前日、元サニーデイ・サービス曽我部恵一の「東京コンサート」を聴いた。
サニーデイ・サービスのファンであればピンと来るだろう。
そぉ!あの彼らの2ndアルバム「東京」を全曲、曽我部恵一が一人でギターの弾き語りで行ったコンサートを収録したものだ。
場所も下高井戸シネマというところが、またソソラレルではないか!


サニーデイ・サービスの世界では特に1stと2ndがお好みなのである。
あのどことなくこっ恥ずかしい若気の至りのような青春の1ページを抒情性に満ちた歌詞とメロディで素直に心に響かせてくれる。
そんな世界に当時ボクは浸っていたのだ。


「東京」発売が1996年。
あれから10年、あの「東京」はいまどんな『東京』になっているのだろう。


久々にドキドキしながらCDを聴いた。
出だしは曽我部恵一も衒いがあったのか、まだ楽曲と演者に距離を感じたが、3曲目の「会いたかった少女」の中で観客に手拍子を求めたあたりから、一気にその距離は縮まり、今、30代半ばになった曽我部の中での『東京』として奏でられていく......。


嗚呼、10年前に感じた東京の世界がここにある。
そういえば10年前、ボクはなにをやっていたんだろう?曲を聴きながら当時を思い返してみる。


1996年。ボクはどんな状況でこの「東京」を聴いていたんだろう?
この年、ボクは入社後初の異動を経験した。
突然の異動で、なおかつ異動先でボクのいままでのノウハウを生かせられるという役割でもなく、この状況に非常に戸惑っていた。
日が経つ毎にこの意味のないただの稼働の頭数合わせにだけ異動させられた様に思われ、非常にモチベーションが低下して周囲に愚痴ばかり振りまいていた。
おまけに、開発のスケジュールは押していてプライベートの時間もとれない......。
こんなはずじゃない。こんなわけがない......。
こんな状況でプライベートがうまくいくはずも無い。案の定、ボクの愚痴を聞き飽きた人は去っていく。
ロマンスの神様は今いずこ?ボクのロマンスは去っていってしまいました(T^T)
お願い...(-人-)プリィ〜ず。


そんな中、ボクの心を捉えたのがサニーデイ・サービスの1st「若者たち」と2nd「東京」だった。
このアルバムの世界のような日常を過ごしたいのに、なぜボクのまわりはこうなんだ?いわば、アルバムの世界に現実逃避していたわけだ。
本来であればあれから10年、30代後半を迎えた今の方がなにかと仕事に追われているはずだが、今の方が20代後半の数年に比べて時間も余裕があるし、プライベートも充実している。
この10年その後も異動を何回か経験し、結構苦しい環境で揉まれている中で、自分でも分からないうちに一皮も二皮も向けてしまったらしい。自分で言うのもなんですが...(^^;)ハハハ。
長いトンネルを抜けたらそこは春の木漏れ日に満ちた優しい世界でした。
正直、今は当時にくらべてとても楽に生きています(笑)



当時は無い物ねだりの現実逃避で聴いていたこの「東京」。
曽我部が奏でる今の『東京』を今のボクはどう受け止めるだろう?


まさに青春狂想曲なのだ。今のボクにとってもこの『東京』は今の東京だった。
昔以上に、そのこっ恥ずかしいロマンスに満ちた街角の光景がひとつひとつボクの日常に溶け込んでくるものだった。


会いたかった少女


まぶしい陽ざしのもとは実はきみだったんで
思わずひるんでしまったぼくです
心に太陽が照るように昼下がりの風に乗って飛んで行きます


見つめるとまぶしすぎて目をつむってしまうほど
知っているんだ ずっとぼくが会いたかった少女
くらくら とろけるようなくちづけ夢見ているぼくです
めらめらと燃えるような恋を夢見ている今日この頃は


正午すぎのバスにゆらりゆられてきみに会いに行く
嬉しくなるような日なんです
昼下がりの風のように行く先知れず人知れず
きみへ飛んで行きます


見つめると悲しすぎて目をつむってしまうほど
知っていたんだ ずっとぼくが会いたかった少女
くらくら とろけるようなくちづけ夢見ているぼくです
めらめらと燃えるような恋を夢見ている今日この頃は


くらくら とろけるようなくちづけ夢見ているぼくです
めらめらと燃えるような恋を夢見ている今日この頃は
心にはそんな太陽がいっぱい
行く先は誰にも教えないまま

昔、サニーデイ・サービスに自らの青春を重ねていた30代の皆さん!
この「東京コンサート」を聴いてまた青春してみませんか?
今でも、あなたの中に若気の至りは存在しているはずですよ?(笑)